6月にもなると鳥の雛たちが続々巣立ちます。親鳥は次の繁殖のために巣立った子には手を掛けることはしません。鳥は野生の厳しい掟の中で逞しく生きなくてはならないのだと、まだ親鳥より小さい体の子鳥たちを見ていて思います。今年の夏、巣だった子ヒヨドリの話です。
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ヒヨドリ(鵯)
観察場所・・・茨城県北部
大きさ・・・28cm(嘴から尾までの長さ)
食事・・・果実や昆虫、花の蜜など
留鳥・・・茨城県北部では留鳥
生息地域・・・山林、農耕地から民家近くの林
参考にした本「野鳥大図鑑」

名前がわかる野鳥大図鑑 99種の鳴き声が聞けるCD付き

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20170603子ヒヨドリsony a6000
6月に巣だったヒヨドリの子がいました。おかしなヒヨドリで、親と一緒にいながら、聞こえてくる鳥の鳴きまねをしています。

夏、中国大陸から渡って来るサンコウチョウが鎮守の森で「ゲッフィフィーフィフィ」と鳴きます。すると「フイーフイーピキャピキャ・・」と真似をします。ウグイスは平地の縄張りで「ホーホーホケキョ、キョキョキョ・・・ケッキョケッキョ」、すると「フィーフイー、ピキャキョピキョピ・・」と真似をします。スズメは「チュリンチュン、チュリンチュン」、すると「シャピーン、シャピーン、ピャピャ」。シジュウカラは「ツピィー、ツピィー、」、すると「ツッピィ、ツッビィ、ツッピィ・・・」。ヒヨドリの親は「バルバル、バルバル・・・」。すると同じように「バルバル、バルバル・・」これはとてもうまい。小さい体で大人の真似をして大きな声で鳴いています。
20170303ヒヨドリの番sony a6000
聞こえて来る鳥の鳴きかたをいちいち真似しています。最初は、声も細く、シジュウカラの鳴きまねはよく似ていて騙されました。

息つく間もなく大きな声で鳴き続けます。腹の底から力を振り絞り鳴いています。その間、親から餌を与えられている様子は見えません。ふつう、親のそばにくっついていて餌をねだりとおすのが子の姿だと思っていましたが、その子ヒヨドリは、親から離れたところで歌い続けます。

アオサギが大きな羽を広げ、団地を横切り、山のふもとへ飛んで行きました。子ヒヨドリは、大きなアオサギにも動じません。知らないのか、気が強いのか、カラスが近くの電柱にとまっても、我関せずで鳴き続けます。親鳥はすぐに飛び立ち、カラスから距離を置きます。アオサギもカラスも、時には小鳥を襲うからです。
ヒヨドリにも変わったのがいるものだと思いました。「普通がいいのに、生きるのが大変かも・・」と思いました。なんて思うのは、私自身体が弱く普通でありたいと願っているからです。あまりにもせっかちに、息つぐ間もなく鳴き続けるのを聞くと、私まで呼吸困難を感じてしまいました。
子ヒヨドリには無事に育ってほしいと思いました。
カラスsony a6000
ハシブトカラス。スズメの雛や、時には鳩も襲う獰猛なハンター。

やがて独り立ちした子ヒヨドリは、電線に止まり、朝から絶え間なく、鳴き続けています。聞いていて、息継ぎはいつしているのかと心配するくらいでした。サンコウチョウとウグイスの鳴きまねはすぐにできなくなって諦めたようです。しかし、シジュウカラはよっぽど気に入ったのか、2カ月ほど鳴き続けていましたが、その内、声も太くなり、全然似なくなると、やらなくなりました。しかし、時々狂ったように激しく「ピキャフィビィ△〇×□☆※%・・・」と鳴くときがありました。何かに挑戦している感じにも見えました。

しかし、可哀想と思うのは私のエゴだということは承知しています。7月から8月にかけ、愛猫ソラが便秘で、上手く出なくて、部屋中にウンチをこすりつけ、天気が悪いのに毎日、一回で9キロ洗える大容量の洗濯機で8回、回していました。私はすっかり疲れ果てていて、微熱が続き、余裕がなくなっていました。子ヒヨドリが毎日元気よく鳴いているのを可哀想だなんて失礼なことだ、と思いました。
休んで、好きな音楽でも聴いて、コーヒーでも飲んでみよう・・・。

それからは、子ヒヨドリの毎日元気よく歌う声を聞くと、気にしない気にしない、笑って歌って、人生捨てたもんじゃないよ・・・なんて言っているように聞こえる日もありました。
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歌の好きなヒヨドリなのかもしれない。鳥だってただ餌を探し、繁殖をするだけではなく、遊びもしたり、歌も歌うのではないかと、いろいろ想像させてくれるヒヨドリでした。ヒヨドリにも個性があることを、その子ヒヨドリに教わりました。

8月にまた、あのつがいが、別の子ヒヨドリを連れて庭に来ました。この子ヒヨドリは、メジロの声によく似ていて、良く鳴いていました。そして日に日にメジロに似なくなり、1週間もするとヒヨドリの逞しい鳴き方に変わりました。やがてその子ヒヨドリも巣立ちを促されて独り立ちしました。
空sony a6000
八月の半ば、あの歌の好きな子ヒヨドリが家のすぐ前の、手を伸ばせば届きそうなところの電線に止まりました。とても大きな声で鳴くので、すぐにあの子ヒヨドリだとわかりました。大きな大人になっています。ヒヨドリはオスもメスも同色で見分けがつきませんが、その立派な体躯からオスではなかろうかと勝手に想像しました。子ヒヨドリは、私がよく写真を撮ってたので、わずか2メートルの距離でも逃げることなく、私の「ピィーヨピィーヨ」という声に反応して「ピィーヨピィーー」と返事をしました。私を覚えていてくれたことと嬉しく思いました。それから今も、ものまねをすることが面白く、しばらく「ピィーヨ、ピィーヨ」、「ピィーヨ、ピィーー」と遊んでいましたが、私の方が、ちょっとご近所に恥ずかしくなり、「じゃね」と終わりにしました。子ヒヨドリも、私が窓を閉めると別の所へ飛んで行き、また歌っていました。

あの子ヒヨドリは、元気にしています。あれからひと月、今日もまた、団地中に響き渡る声で「ピィャーピィャーチュチュピィー、ピーピキョ、ピキャピィチュチュピィー、チュチュピィ・・・」と鳴いています。面白いので鳴いている声を文字にしてみました。長い間様々な声で鳴いていたので、自分で作曲したのかもしれないと思いました。
ヒヨドリsony a6000
今、鳥たちは餌の豊富な場所で暮らしていて、冬になると木の実などを求めてまた団地でも見ることが出来ます。あの歌の好きなヒヨドリも新しい伴侶を得て庭に来るといいなと思います。夏は、ただ暑くてうんざりですが、鳥たちの声を聞くと、季節が巡ることを謳って教えてくれます。外を眺めることをやめられません。

ヒヨドリの生態について「鵯(ヒヨドリ) ~庭に来る野鳥~」書いてあります。こちらもご覧ください。

私の使っているカメラ



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